
日本家屋の象徴とも言える「瓦屋根」。その耐久性は非常に高く、適切なメンテナンスを行えば50年、100年と家を守り続けることができます。しかし、多くの家主様が見落としがちなのが、瓦そのものではなく、瓦同士の隙間や棟(むね)部分に使われている「漆喰(しっくい)」の存在です。
実は、瓦屋根における雨漏りや倒壊トラブルの原因の多くは、瓦の破損ではなく、この「漆喰の劣化」に起因しています。「瓦は丈夫だから何もしなくて大丈夫」と思い込んでいると、気づかないうちに屋根の内部で腐食が進行し、ある日突然、高額な修繕費用が必要になるケースも少なくありません。
本記事では、年間3,000件以上の施工実績を持つ外壁・屋根塗装の専門家の視点から、瓦屋根の漆喰の役割、見逃してはいけない劣化サイン、メンテナンスの適切な時期と費用相場、そしてDIYのリスクまでを徹底的に解説します。専門用語にはわかりやすい解説を加え、初めての方でも自宅の屋根の状態を正しく判断できるよう構成しました。大切なお住まいを長く守るためのバイブルとしてご活用ください。
瓦屋根のメンテナンス、いくらかかるか気になりませんか? 「まだ大丈夫」と思っていても、一度費用感を知っておくと安心です。
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瓦屋根に使われる漆喰とは?
瓦屋根における漆喰は、単なる接着剤や隙間埋めの材料ではありません。屋根の構造的な強度を保ち、雨水の侵入を食い止めるための「最終防衛ライン」としての重要な役割を担っています。まずは漆喰がどこに使われ、なぜ重要なのか、そのメカニズムを解説します。
漆喰の役割と使われている場所
瓦屋根において漆喰が使用される場所は、主に「棟(むね)」と呼ばれる屋根の頂上部分や、屋根の面と面が合わさる接合部です。具体的には、半月状の瓦(冠瓦)の下や、熨斗(のし)瓦の継ぎ目、鬼瓦の周囲などに施工されています。
漆喰の最大の役割は、「葺き土(ふきつち)」を守ることと、瓦を固定することの2点に集約されます。 伝統的な瓦屋根(湿式工法)では、瓦の下に粘土質の土(葺き土)を敷き詰め、その粘着力で瓦を安定させています。また、棟部分では土を高く盛り上げて瓦を積み上げていきます。この葺き土は、乾燥した状態であれば強固ですが、一度水を含むと泥状になり、崩れやすくなる性質を持っています。漆喰は、この葺き土が雨風に直接晒されないよう表面をコーティングし、防水層として機能しているのです。
また、瓦同士の隙間を埋めることで、接着力を高め、地震や強風による瓦のズレや落下を防ぐ役割も果たしています。「瓦屋根は100年もつ」と言われますが、これは「瓦という素材」の話であり、それを支える「漆喰」の寿命は環境により10年〜20年程度です。この寿命のギャップこそが、瓦屋根メンテナンスにおいて最も注意すべきポイントなのです。もし漆喰が剥がれ落ちれば、内部の土が流出し、最終的には棟全体の崩落や雨漏りに直結します。つまり、漆喰は「屋根の寿命を握る鍵」と言っても過言ではありません。
| 使用箇所 | 役割 | 劣化時のリスク |
|---|---|---|
| 棟(むね)の土台 | 葺き土の保護、防水、美観 | 土の流出、棟の歪み・倒壊 |
| 鬼瓦(おにがわら)周り | 鬼瓦の固定、隙間の防水 | 鬼瓦の落下、雨水の浸入 |
| 熨斗(のし)瓦の継ぎ目 | 瓦同士の接着、ズレ防止 | 熨斗瓦のズレ、内部への浸水 |
瓦屋根の構造と漆喰が劣化しやすい理由
なぜ、耐久性の高い瓦に対して、漆喰だけがこれほど早く劣化してしまうのでしょうか。それには、屋根という過酷な環境と、漆喰という素材の特性が関係しています。
漆喰は本来、消石灰(水酸化カルシウム)を主成分とし、海藻糊やスサ(植物繊維)を混ぜて作られる自然素材です。硬化すると非常に硬くなりますが、その反面、長期間の雨風や紫外線に晒されることで、少しずつ化学変化を起こします。特に影響が大きいのが以下の3つの要因です。
- 温度変化による膨張と収縮 屋根は夏場には70度近くまで高温になり、冬場は氷点下になることもあります。瓦や漆喰は温度変化によってわずかに膨張・収縮を繰り返します。瓦(陶器)と漆喰(石灰)では熱膨張率が異なるため、その接合面には常にストレスがかかり続け、やがて剥離やひび割れが生じます。
- 雨水と酸性雨の影響 漆喰の主成分であるカルシウムは、酸性の雨に弱く、長年雨に打たれることで徐々に成分が溶け出し、痩せていきます。また、吸水と乾燥を繰り返すことで強度が低下し、ボロボロと砂状になって崩れやすくなります。
- 直射日光(紫外線) 紫外線は物質の結合を破壊します。常に直射日光を浴び続ける屋根の上では、外壁などに使われる漆喰よりも劣化のスピードが格段に速くなります。
さらに、近年では「南蛮漆喰(なんばんしっくい)」という、シリコンや防水剤、骨材をあらかじめ配合した高耐久・高防水の材料が主流になっています。これは従来の漆喰と葺き土の機能を兼ね備えた画期的な建材ですが、それでも永久にメンテナンスフリーというわけではありません。 昔ながらの「白漆喰」は表面が美しく仕上がりますが、定期的な塗り直しが必須です。一方、「南蛮漆喰」は黒や白の色があり、強度が高いのが特徴です。ご自宅の屋根がどちらのタイプで施工されているかを知ることも、メンテナンス計画には重要です。いずれにせよ、「瓦は無傷でも漆喰は傷んでいる」という前提で点検を行う必要があります。
| 特徴 | 従来の漆喰(本漆喰) | 南蛮漆喰(現代の主流) |
|---|---|---|
| 成分 | 消石灰、海藻糊、スサ | 消石灰、シリコン、骨材、防水剤 |
| 耐久性 | 中(定期的な塗り替え必須) | 高(防水性・強度が向上) |
| 主な用途 | 表面の化粧塗り、仕上げ | 土台作り、瓦の固定、仕上げ |
| メンテナンス周期 | 約10年〜15年 | 約15年〜20年 |
漆喰の劣化サインとメンテナンス時期
漆喰の劣化は、地上から見上げただけでは気づきにくい場合が多いですが、注意深く観察すると初期症状を発見できることがあります。ここでは、一般の方が目視で確認できる危険信号と、プロが判断する詳細な基準について解説します。
目視で分かる漆喰の劣化症状
屋根に登るのは危険ですので、まずは地上から、あるいは2階の窓やベランダから双眼鏡などを使って確認できる症状を紹介します。以下の症状が一つでも見られたら、メンテナンスを検討すべきサインです。
- 漆喰のひび割れ・剥がれ 最も分かりやすい初期症状です。白かった漆喰部分に亀裂が入っていたり、一部が剥がれ落ちて中の茶色い土が見え隠れしていたりする場合は要注意です。剥がれた漆喰の欠片が、庭やベランダに落ちているのを見つけて気づくケースも多々あります。
- 葺き土(ふきつち)の露出・流出 漆喰が剥がれ、内部の土が完全に見えている状態は「危険度:中〜高」です。雨が降るたびに土が削られ、泥水となって流れ出します。こうなると瓦を支える力が弱まり、ちょっとした地震や強風で瓦がズレたり落下したりする恐れがあります。
- 棟瓦(むねがわら)のズレ・歪み 屋根の頂点にある棟が、波打つように歪んで見えたり、蛇行していたりする場合、内部の土台がすでに崩壊している可能性が高いです。これは漆喰の表面的な補修では直せない重篤な症状であり、早急な対応が必要です。
- コケ・カビ・藻の発生 漆喰部分が黒ずんでいたり、緑色のコケが生えていたりする場合、漆喰が本来持っている防水機能を失い、常に水分を含んでいることを示しています。水を含んだ漆喰は脆くなり、冬場の凍結破裂の原因にもなります。
- 鬼瓦(おにがわら)周りの隙間 屋根の端にある鬼瓦と、主棟との接合部の漆喰は特に剥がれやすい箇所です。ここから雨水が入ると、壁際の雨漏りに直結しやすいため注意が必要です。
| 劣化症状 | 危険度 | 推奨される対応 |
|---|---|---|
| ひび割れ・黒ずみ | ★☆☆(軽度) | 数年以内の点検・補修検討 |
| 部分的な剥がれ | ★★☆(中度) | 専門業者への点検依頼(早めに) |
| 葺き土の露出・土の流出 | ★★★(重度) | 即時の補修工事が必要 |
| 棟の歪み・瓦のズレ | ★★★(危険) | 即時の積み直し工事が必要 |
漆喰の寿命と専門家が見る判断基準
一般的に、漆喰の耐用年数はおよそ10年〜20年と言われています。しかし、これはあくまで目安であり、立地条件によって大きく異なります。例えば、台風の通り道になりやすい地域、海沿いで塩害の影響を受ける地域、また屋根の日当たりや振動(幹線道路沿いなど)の有無によって、劣化スピードは数年単位で変わってきます。
私たち専門家が点検を行う際、単に「漆喰が剥がれているか」だけでなく、以下のような複合的な視点でメンテナンス時期を判断します。
- 漆喰の厚みと硬度 表面は綺麗に見えても、打診検査(専用のハンマー等で音を聞く検査)を行うと、内部が浮いていて「コンコン」という軽い音がすることがあります。これは接着力が失われている証拠であり、見た目以上に劣化が進行しています。
- 下地(葺き土)の状態 漆喰を剥がして内部を確認した際、葺き土が乾燥してサラサラの状態(砂化)になっているか、あるいは湿って粘土状になっているかを確認します。湿っている場合は、すでに雨水が浸入している証拠であり、表面の塗り直しだけでは解決しません。
- 熨斗(のし)瓦の勾配と結束線 棟を形成する熨斗瓦の角度が水平に近くなっていないか(雨水が溜まりやすくなる)、瓦を縛っている銅線が切れていないかを確認します。これらは漆喰そのものの劣化ではありませんが、漆喰の寿命を縮める構造的な要因となります。
「築10年を過ぎたら一度点検」「築20年で大規模な補修」というのが一つのセオリーですが、重要なのは「軽症のうちに対処する」ことです。漆喰の詰め直し(表面補修)で済む段階であれば費用は抑えられますが、放置して棟の積み直し(解体工事)が必要になると、費用は数倍に跳ね上がります。 プロの視点では、「今すぐ直さないと雨漏りする」のか、「あと2〜3年は持つが、予防のために直すべきか」を明確に区別してアドバイスを行います。
「うちの屋根もそろそろかも…?」 不安な症状が一つでもあったら、放置は禁物です。あなたの屋根の状態を選ぶだけで、概算費用がすぐに分かります。
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漆喰メンテナンスの種類と工事方法
漆喰のメンテナンスには、主に「詰め直し工事」と「取り直し(積み直し)工事」の2種類があります。これらは名前こそ似ていますが、工事の規模や目的、費用が全く異なります。ご自宅の屋根の状態に合わせて最適な工法を選ぶために、それぞれの違いと具体的な手順を理解しましょう。
漆喰の「詰め直し」と「取り直し」の違い
簡単に言えば、「詰め直し」は表面の化粧直し、「取り直し」は根本的な土台からの作り直しです。
1. 漆喰詰め直し工事(メンテナンス・予防) 既存の古くなった漆喰を取り除き、新しい漆喰を塗り込む工事です。
- 適用条件: 瓦自体にズレや歪みがなく、内部の葺き土が健全な場合。
- メリット: 工期が短く、費用が安価で済む。
- デメリット: 内部の土が傷んでいる場合、施工してもすぐに剥がれたり、雨漏りが止まらなかったりする可能性がある。あくまで「現状維持・保護」のための工事です。
2. 棟瓦取り直し工事(修理・改修) 棟瓦を一度すべて解体・撤去し、古くなった土や漆喰をすべて処分します。その後、新たに南蛮漆喰などで土台を作り直し、瓦を積み直す工事です。
- 適用条件: 棟が歪んでいる、雨漏りが発生している、築年数が古く土が砂状になっている場合。
- メリット: 屋根の頂上部分を新品同様の状態にリセットできるため、耐久性が飛躍的に向上する。耐震補強(ガイドライン工法など)も同時に行える。
- デメリット: 手間と材料費がかかるため、費用が高額になる。工期も長くなる。
「費用を抑えたいから詰め直しで」と安易に判断するのは危険です。内部が腐食しているのに表面だけ蓋をしてしまうと、湿気の逃げ場がなくなり、かえって雨漏りを悪化させたり、下地の木材を腐らせたりする原因になります。どちらの工法が適切かは、必ず専門家の診断を仰いでください。
| 項目 | 漆喰詰め直し工事 | 棟瓦取り直し工事 |
|---|---|---|
| 工事内容 | 表面の漆喰のみ交換 | 棟全体を解体し作り直す |
| 目的 | 予防保全・美観回復 | 構造補強・雨漏り修理 |
| 工期目安 | 1日〜3日 | 3日〜7日 |
| 費用 | 安価 | 高価(詰め直しの2〜3倍) |
| 耐久性 | 約10年〜15年 | 約20年〜30年(南蛮漆喰使用時) |
漆喰補修工事の流れ
ここでは、一般的な「詰め直し工事」と「取り直し工事」の現場の流れを解説します。どのような作業が行われているかを知ることで、見積もりの妥当性を判断しやすくなります。
【漆喰詰め直し工事のステップ】
- 足場設置(必要な場合): 屋根の勾配が急な場合や、安全確保のために足場を組みます。
- 既存漆喰の撤去: 古くなった漆喰をハンマーやヘラで丁寧に取り除きます。この作業を怠り、古い漆喰の上から重ね塗り(増し打ち)する業者がいますが、これは剥がれの原因になるためNG施工です。
- 下地調整・清掃: 中の土を整え、接着を良くするために霧吹き等で湿らせます。
- 漆喰塗り込み: 専用のコテを使い、隙間なく漆喰(または南蛮漆喰)を塗り込みます。厚すぎると雨水が当たりやすくなり、薄すぎると強度が落ちるため、職人の技術が問われます。
- 表面仕上げ: 表面を滑らかに整え、瓦との境界線を美しく仕上げます。
【棟瓦取り直し工事のステップ】
- 既存棟の解体: 棟瓦、熨斗瓦、土、漆喰をすべて撤去し、屋根を平らな状態にします。
- 土台作り: 耐震金具や鉄筋を入れたり、南蛮漆喰を使って強固な土台を作ります。従来の土だけの工法より防水性と耐震性が高まります。
- 瓦の積み直し: 熨斗瓦を積み上げ、銅線やステンレス線でしっかりと緊結します。
- 冠瓦の設置: 最上部の冠瓦を被せ、ビスやボルトで固定します(ガイドライン工法)。
- 清掃・点検: 工事完了後、瓦の割れや汚れがないか最終確認します。
★施工の重要ポイント 漆喰は天気や湿度に敏感な素材です。雨の日はもちろん、湿度が高すぎる日に施工すると乾燥不良を起こし、強度が落ちます。また、適切な厚みで塗らないと、瓦の表面より漆喰が飛び出してしまい、かえって雨水を受け止めて雨漏りの原因になる(雨受け現象)ことがあります。「ただ塗ればいい」というわけではないのが、漆喰工事の奥深さです。
ご自宅の屋根には「詰め直し」と「取り直し」どちらが必要? 簡単な質問に答えるだけで、最適なプランと費用相場がわかります。
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漆喰メンテナンスの費用相場
漆喰工事を検討する際、最も気になるのが費用です。屋根工事は「定価」が見えにくい分野ですが、適正価格を知っておくことで、高すぎるボッタクリ業者や、安すぎて手抜き工事をする業者を見抜くことができます。
工事内容別の費用相場と内訳
漆喰メンテナンスの費用は、施工する「長さ(メートル数)」と「足場の有無」で概算が決まります。
1. 漆喰詰め直し工事の相場
- 単価:4,000円 〜 8,000円 / メートル(m) 一般的な住宅(棟の長さがトータル20m〜30m程度)の場合、工事費だけで8万円〜25万円程度が目安です。これに足場代が加わると、プラス15万円〜20万円程度かかります。
2. 棟瓦取り直し工事の相場
- 単価:15,000円 〜 25,000円 / メートル(m) 棟の段数(高さ)によって単価は変動します。一般的な住宅で30万円〜80万円程度がボリュームゾーンです。廃材処分費(古い土や瓦の処分)が含まれているかも確認が必要です。
【費用の内訳】 見積もりには通常、以下の項目が含まれます。
- 材料費: 漆喰、南蛮漆喰、銅線、金具など。
- 施工費(人件費): 職人の技術料。瓦職人は専門性が高いため、一般的な塗装職人より単価が高くなる傾向があります。
- 足場仮設費: 15万円〜25万円前後。屋根工事には安全確保と施工品質維持のために足場が不可欠なケースが多いです。
- 諸経費・廃材処分費: 現場管理費やゴミの処分代。
| 工事種別 | メートル単価目安 | 30m施工時の総額目安(足場代別) |
|---|---|---|
| 漆喰詰め直し | 4,000円〜8,000円 | 12万円〜24万円 |
| 棟瓦取り直し | 15,000円〜25,000円 | 45万円〜75万円 |
※上記はあくまで目安であり、屋根の形状や劣化状況により変動します。
費用を左右する3つの要因
同じ建坪の家でも、見積もり金額に大きな差が出ることがあります。その背景には、以下の3つの要因が関係しています。
1. 屋根の勾配(角度)と高さ 屋根の傾斜が急な(6寸勾配以上など)場合、職人が屋根の上に立つことが困難になるため、「屋根足場」という追加の足場が必要になります。また、3階建ての場合は足場の高さが増すため、その分費用が上がります。
2. 既存の施工方法と段数 棟瓦が何段積まれているかによって、作業量が変わります。段数が高い立派な棟ほど、解体や積み直しに手間がかかります。また、古い工法で施工されている場合、土の撤去に時間がかかることがあります。
3. 劣化の進行度(放置リスクによるコスト増) これが最も大きな要因です。
- 早期発見(詰め直し): 足場代+20万円程度で済む。
- 放置して雨漏り発生(取り直し+下地補修): 足場代+80万円〜100万円以上。 さらに、雨漏りが進行して野地板(屋根の下の板)や垂木、断熱材、天井板まで腐食してしまうと、屋根の葺き替えや内装工事まで必要になり、200万円を超える大工事になることも珍しくありません。「まだ大丈夫」と先延ばしにすることが、結果的に最も高い買い物になってしまう典型例が屋根メンテナンスなのです。
足場代は一度の工事で大きなウェイトを占めます。そのため、**「外壁塗装と合わせて屋根漆喰も直す」**のが最もコストパフォーマンスの良い方法です。足場を一度組むだけで済むため、トータルで15万〜20万円程度の節約になります。
「結局、総額でいくらかかるの?」 足場代や諸経費を含めたリアルな金額を知りたい方はこちら。
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DIYは可能?業者に依頼すべき理由
近年、ホームセンターやネット通販で「屋根用補修材」が手軽に購入できるようになりました。動画サイトでもDIY解説動画が見られますが、結論から申し上げますと、瓦屋根の漆喰補修をDIYで行うことは極めて危険であり、強く推奨しません。 その理由を「安全性」と「施工品質」の両面から解説します。
漆喰補修DIYの危険性と失敗例
リスク1:高所作業による転落事故 屋根の上は、想像以上に足場が悪く、恐怖感があります。特に瓦屋根は傾斜があり、苔や砂埃で滑りやすくなっています。プロの職人でさえ、専用の足袋を履き、慎重に作業します。慣れていない一般の方が不安定な姿勢で作業を行うことは、命に関わる転落事故に直結します。実際に、DIY中の転落事故は後を絶ちません。
リスク2:誤った施工による雨漏りの誘発 これがDIYで最も多い失敗例です。 「隙間を埋めればいい」と考えて、ホームセンターで買ったシリコンコーキング材などで漆喰部分を完全に塞いでしまう方がいます。しかし、瓦屋根には「水の逃げ道」が必要です。入ってきた雨水を排出するための隙間まで塞いでしまうと、雨水が屋根内部に逆流し、結果として雨漏りを引き起こします(毛細管現象など)。 良かれと思ってやった補修が原因で、高額なリカバリー工事が必要になるケースは、我々のもとに寄せられる相談でも非常に多いのです。
リスク3:不適切な材料の使用 瓦用ではない安価なセメントや、用途の違うパテを使ってしまうと、瓦との接着が悪くすぐに割れたり、瓦そのものを割ってしまったりすることがあります。
| 比較項目 | DIYでの補修 | プロ(専門業者)による施工 |
|---|---|---|
| 安全性 | 危険極まりない(死亡事故リスク有) | 足場設置・安全対策徹底 |
| 材料 | 汎用品が多く耐久性が低い | 専用の南蛮漆喰など高耐久材を使用 |
| 技術 | 見様見真似。誤った施工が多い | 適切な厚み、水切りの知識がある |
| 結果 | 雨漏り悪化のリスク大 | 長期的な防水・耐震性の確保 |
信頼できる専門業者を選ぶポイント
漆喰工事は、塗装業者、リフォーム会社、瓦専門業者など、様々な会社が請け負っています。しかし、中には知識の浅い業者や、訪問販売で不安を煽り法外な契約を迫る悪徳業者も存在します。信頼できるパートナーを見つけるためのチェックポイントをご紹介します。
1. 「瓦屋根」の施工実績が豊富か ホームページや施工事例を見て、瓦屋根の漆喰補修の実績が多数掲載されているか確認しましょう。施工前後の写真だけでなく、工事中の様子(土台の状態など)も公開している業者は信頼度が高いと言えます。
2. 資格保有者が在籍しているか 「かわらぶき技能士(1級・2級)」や「瓦屋根工事技士」、「雨漏り診断士」などの資格を持つスタッフがいるかどうかも一つの基準です。これらの資格は、専門的な知識と技術を持っていることの証明になります。
3. 点検・診断が丁寧で、写真を見せてくれるか 屋根の上はお客様が見えない場所です。だからこそ、ドローンや高所カメラを使って屋根の現状を撮影し、モニターや報告書で見せてくれる業者を選びましょう。「壊れていますよ」という言葉だけでなく、証拠(写真)を提示して説明してくれる業者は誠実です。
4. 見積もりの内容が具体的か 「漆喰工事一式」といった大雑把な見積もりには注意が必要です。「既存漆喰撤去」「下地調整」「南蛮漆喰施工」など、工程ごとに単価と数量が明記されているか確認しましょう。また、複数の業者から相見積もりを取ることで、適正価格が見えてきます。
危険なDIYをする前に。 プロに頼んだ場合の適正価格を知れば、無理に自分で直すリスクを冒す必要がないことに気づくはずです。
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コラムのまとめ
瓦屋根は日本の気候風土に適した素晴らしい屋根材ですが、その性能を維持するためには「漆喰」という要(かなめ)のメンテナンスが欠かせません。 今回の記事の要点を振り返ります。
- 瓦は丈夫でも、漆喰は10年〜20年で劣化する消耗品である。
- 漆喰の劣化は「葺き土」の流出を招き、棟の倒壊や雨漏りの直接的な原因となる。
- 初期症状(ひび割れ・剥がれ)で対応すれば「詰め直し」で安く済むが、放置すると高額な「取り直し」が必要になる。
- メンテナンス費用の相場を知り、足場代を節約するために外壁塗装とのセット工事も検討する。
- DIYは転落や雨漏り悪化のリスクが高いため、必ず専門業者に依頼する。
屋根のトラブルは、目に見えないところで静かに進行します。「雨漏りしてから」では、修復にかかる費用も精神的なストレスも甚大です。 まずは、ご自宅の屋根が今どのような状態なのか、「知る」ことから始めてみてはいかがでしょうか。築10年を超えている、または前回のメンテナンスから時間が空いている場合は、一度プロの目で点検してもらうことが、安心への第一歩です。
信頼できる業者による適切な診断と、タイミングの良いメンテナンスが、あなたの大切な資産である家を、長く美しく守り続ける秘訣です。
さいごに
台風や秋の長雨シーズンを迎える前に、屋根の不安を解消しておきませんか? 特に漆喰の劣化は、強風や豪雨の際に一気に被害が拡大する恐れがあります。「うちはまだ大丈夫かな?」「もし修理するとしたらいくらくらいかかるんだろう?」と少しでも気になった方は、まずは概算の費用感を知ることから始めてみてください。
スターペイントでは、3分のチャット入力で完了する無料見積シミュレーションをご用意しています。 現場調査を依頼する前に、お住まいの条件を選ぶだけで、誰でも簡単に費用の目安を把握することができます。しつこい営業などは一切ありませんので、ぜひお気軽にお試しください。
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