
はじめに
日本の住宅で外壁材として広く普及した「サイディング」。デザイン性や施工性に優れる一方、一部の古い年代の製品には**アスベスト(石綿)**が含まれているものが存在し、今もなお多くの住宅所有者やリフォームを検討されている方にとって大きな不安の種となっています。
「うちのサイディングは大丈夫だろうか?」「アスベストが使われていたのはいつ頃まで?」
この記事では、「サイディング アスベスト 年代」というキーワードで情報を探している方に向けて、アスベスト含有サイディングが使われていた具体的な時期や法規制の流れ、ご自宅の築年数からリスクを判断する目安、そして健康への影響や適切な対策方法まで、専門家の視点からわかりやすく解説します。ご自宅の安全性を確認し、安心して暮らすための一助として、ぜひご活用ください。
サイディングとアスベストの基礎知識
サイディングとアスベストの問題を正しく理解するために、まずはそれぞれの基本的な定義と関係性を整理しておきましょう。なぜこの二つが結びついてしまったのか、その背景を知ることが第一歩です。
サイディングとは?外壁材としての普及の歴史
サイディングとは、あらかじめ工場で成形された板状の外壁材のことです。施工が容易で工期を短縮できることから、1970年代以降、モルタル壁に代わって日本の住宅で急速に普及しました。
サイディングには主に以下の4つの種類があります。
- 窯業(ようぎょう)系サイディング:セメント質と繊維質を主原料とする。国内シェア7割以上を占める最もポピュラーな種類。
- 金属系サイディング:ガルバリウム鋼板などの金属板に断熱材を裏打ちしたもの。
- 木質系サイディング:天然木などを加工し、表面処理を施したもの。
- 樹脂系サイディング:塩化ビニル樹脂を主原料とする。
この中で特にアスベストとの関連が深いのが、主流である窯業系サイディングです。主原料のセメントはそのままでは割れやすいため、強度を高める目的で、安価で非常に丈夫な繊維であるアスベストが補強材として混ぜ込まれていました。
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アスベストとは?その特徴と住宅建材での利用
アスベスト(石綿)とは、天然に存在する極めて細い繊維状の鉱物です。耐火性、断熱性、耐久性、防音性など、建材として非常に優れた多くの性質を持ちながら安価であったため、「奇跡の鉱物」とも呼ばれ、かつては世界中で様々な工業製品や建築資材に広く利用されていました。
サイディングにアスベストが混ぜられた主な理由は、以下の2点です。
- 強度確保:セメントの弱点である「曲げ」や「引っ張り」に対する強度を、アスベスト繊維が補強し、割れにくく丈夫な製品を作ることができた。
- 耐火性能の向上:アスベスト自体が燃えない性質を持つため、建材の耐火性を高めることができた。
このように、当時は性能を高めるために良かれと思って使用されていましたが、後にその深刻な健康被害が明らかになりました。
サイディングにアスベストが使われていた年代
ご自宅のサイディングにアスベストが含まれているかを知る上で、最も重要なのが「いつ製造された製品か」という年代の情報です。
アスベスト含有サイディングの製造・流通時期
日本において、アスベストを含んだサイディング(窯業系)が製造・流通していたのは、主に1960年代から2004年(平成16年)頃までです。
特に、住宅建設が盛んだった1970年代から1990年代にかけて建てられた住宅では、アスベスト含有サイディングが使用されている可能性が非常に高いと言えます。2004年に大手建材メーカーがアスベストの使用を自主的に中止し、代替品への切り替えを進めましたが、法的に原則全面禁止となる2006年まで、一部の製品や在庫品が流通していた可能性があります。
規制と禁止の流れ:年表で整理
アスベストの健康被害が明らかになるにつれて、国による規制は段階的に強化されていきました。この流れを把握することで、年代ごとのリスクをより正確に理解できます。
年代 | 規制内容 | 備考 |
1975年(昭和50年) | 吹付アスベストの使用が原則禁止 | 含有率5%を超えるものが対象。サイディングはまだ規制外。 |
1995年(平成7年) | 毒性の高いアスベスト2種の使用禁止 | クロシドライト(青石綿)、アモサイト(茶石綿)が対象。 |
2004年(平成16年) | アスベスト含有建材の製造等が一部禁止 | 含有率1%を超える石綿セメント円筒などの製造が禁止。この年を境に大手メーカーはサイディングへの使用を自主的に中止。 |
2006年(平成18年) | アスベスト含有製品の製造・使用が原則全面禁止 | 含有率0.1%を超えるものの製造・使用等が禁止に。 |
築年数からわかるアスベストリスク
ご自宅の建築確認申請が出された「築年数」は、アスベスト含有の可能性を推測する上で最も分かりやすい指標となります。
築年数別のリスク目安
築年数/建築年代 | アスベスト含有のリスク度合い | 解説 |
築約20年未満 (2006年以降) | 低い | 原則全面禁止後のため、アスベストが含まれている可能性は極めて低い。 |
築約20年~30年 (1995年~2005年頃) | 中(要注意) | 規制強化が進んだ時期。含有率は低いが、含まれている可能性は残るため調査が推奨される。 |
築約30年以上 (~1994年以前) | 高い | 規制が緩かった時代で、アスベスト含有サイディングが広く使われていた可能性が非常に高い。 |
築年数だけでは判断できないケース
ただし、築年数はあくまで目安であり、以下のような例外も存在します。
- 在庫品の流通:2004年以降に建てられた住宅でも、規制前に製造された在庫のアスベスト含有サイディングが使用されたケース。
- 輸入建材の使用:海外で製造された規制の緩い建材が使用されているケース。
- 増改築:古い母屋と新しい増築部分で、使用されている建材の年代が異なるケース。
そのため、「2006年以降だから絶対安全」と断定するのではなく、リフォームや解体を検討する際は、専門家による正確な調査が不可欠です。
サイディングにアスベストが含まれているか調べる方法
ご自宅のサイディングにアスベストが含まれているか不安な場合、以下の方法で確認することができます。
製品名・型番・資料から調べる
まずはご自身で確認できる方法です。住宅を建てた際の設計図書、仕様書、工事請負契約書などを確認し、外壁材のメーカー名や製品名、型番が記載されていないか探してみましょう。
製品名がわかれば、国土交通省や建材メーカーが公開しているデータベースで、アスベストの含有情報を検索することができます。
- 国土交通省「石綿(アスベスト)含有建材データベース」:メーカー名や製品名から検索が可能です。
専門業者による調査
資料が見つからない場合や、より正確な情報を知りたい場合は、専門業者による現地調査が必要です。自己判断には限界があり、見た目だけでアスベストの有無を判断することはプロでも不可能です。
調査の流れ
- 現地調査:専門家が現地を訪れ、図面確認や目視で建材を特定します。
- サンプリング:含有の疑いがある場合、サイディングの一部を少量採取します。
- 分析検査:採取したサンプルを専門の分析機関に送り、顕微鏡などでアスベストの有無と種類を分析します。
調査費用は、サンプリングや分析の有無によって数万円~10万円程度が目安となります。リフォーム会社や解体業者、アスベスト調査の専門会社に依頼することができます。
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アスベストが含まれるサイディングのリスク
アスベスト含有サイディングがもたらすリスクは、「健康被害」と「法的なリスク」の2つの側面から理解する必要があります。
健康被害の可能性
アスベストの繊維は目に見えないほど極めて細かく、飛散すると空気中を浮遊し、呼吸によって肺の奥深くにまで入り込みます。体内に蓄積されたアスベストは、長い年月を経て石綿肺、肺がん、悪性中皮腫といった深刻な病気を引き起こす可能性があります。
重要なポイント
- 通常の状態ではリスクは低い:サイディングが塗装でコーティングされ、破損なく健全な状態であれば、アスベストが飛散するリスクは低いとされています。
- 劣化や破損、解体時にリスクが高まる:サイディングが経年劣化でひび割れたり、地震や台風で破損したり、リフォームや解体で切断・破砕されたりする際に、内部のアスベスト繊維が飛散し、危険性が高まります。
解体・リフォーム時の法的義務
アスベストによる健康被害を防ぐため、法律(石綿障害予防規則)が改正され、2022年4月1日から解体・リフォーム時の規制が大幅に強化されました。
- 事前調査の義務化:建物の解体・改修工事を行う際、事業者はアスベストの有無を事前に調査することが義務付けられています。
- 調査結果の報告義務:一定規模以上の工事では、調査結果を労働基準監督署と自治体に電子システムで報告する必要があります。
- 専門業者による施工:アスベストの除去作業は、専門の知識と技術を持つ資格者が、法令に定められた飛散防止対策を講じて行わなければなりません。
これらの規制に違反した場合、事業者には厳しい罰則が科せられます。知識のないままDIYでアスベスト含有サイディングを解体・撤去することは、法律違反となるだけでなく、自身や近隣住民を深刻な健康被害に晒す非常に危険な行為です。
アスベストサイディングの処理と対策
もしご自宅のサイディングにアスベストが含まれていた場合、適切な方法で対処する必要があります。
改修・リフォームの注意点
アスベスト含有サイディングの改修方法は、主に以下の2つです。
- 除去工法:既存のサイディングを全て撤去し、新しい外壁材に張り替える方法。アスベストを完全に無くすことができますが、撤去費用や処分費用が高額になります。
- カバー工法(封じ込め):既存のサイディングの上から、新しい外壁材を重ね張りする方法。アスベストを飛散させずに封じ込めることができ、除去に比べて費用を抑えられますが、建物の重量が増すというデメリットがあります。
どちらの工法を選択するにしても、アスベストの飛散防止対策(作業場の隔離、湿潤化など)を徹底できる、実績と資格のある専門業者に依頼することが絶対条件です。
処分・廃棄方法
アスベストを含んだサイディングは、「特別管理産業廃棄物」として法律で厳しく規制されており、通常の産業廃棄物と同じように処分することはできません。
許可を得た専門の収集運搬業者と中間処理施設、最終処分場にて、適正に処理する必要があります。不法投棄は極めて重い罰則の対象となります。
自治体によっては、アスベストの調査や除去に関する補助金制度を設けている場合がありますので、お住まいの市区町村の窓口に確認してみることをお勧めします。
安全で快適な住まいを保つために
アスベストの問題は不安に感じるかもしれませんが、正しい知識を持ち、適切なメンテナンスを行うことで、安全な住環境を維持することができます。
定期的な点検と外壁メンテナンス
アスベストの有無に関わらず、サイディング外壁の寿命は一般的に30年~40年と言われています。しかし、その表面を保護している塗膜は、10年程度で劣化して防水機能を失い始めます。
定期的な塗装メンテナンスや、サイディングの継ぎ目を埋めるシーリング(コーキング)の補修を行うことは、アスベストの飛散を防ぐだけでなく、外壁材そのものの劣化を抑え、住まいの寿命を延ばすことにつながります。アスベストリスクがない住宅であっても、外壁の定期的なメンテナンスは非常に重要です。
専門業者への早めの相談のすすめ
アスベストの有無の最終的な判断は、専門家でなければ困難です。また、万が一含まれていた場合の取り扱いは、法律で厳しく定められています。安易な自己判断やDIYは、ご自身と周囲の健康を危険に晒すだけでなく、法的な罰則のリスクも伴います。
少しでも不安に感じたら、まずは信頼できるリフォーム会社や塗装業者に相談しましょう。法令を遵守し、安全を最優先に対応してくれる専門家に任せることが、長期的に見て最も確実で安心な方法です。
まとめ
今回は、サイディングに含まれるアスベストについて、年代や見分け方、リスクと対策を解説しました。
- 日本の住宅のサイディングには、かつて強度向上のためにアスベストが広く使われていました。
- 特に1970年代から1990年代に建てられた住宅は、アスベスト含有のリスクが高いと考えられます。
- 築年数や製品名である程度の推測は可能ですが、最終的な判断には専門業者による調査が最も確実です。
- 通常の使用では飛散リスクは低いものの、劣化や解体・リフォーム時には健康被害のリスクが高まり、法律による厳しい規制の対象となります。
- アスベストの有無に関わらず、外壁は定期的に点検・メンテナンスを行うことで、住まいの安全性と快適性を長期的に守ることができます。
不安を感じるかもしれませんが、正しい知識を持って専門家と連携すれば、アスベストのリスクは適切に管理することが可能です。
最後に
サイディングにアスベストが使われていた年代やリスクについて、ご理解いただけたでしょうか。外壁の安全性を確かめ、適切に維持することは、ご家族の健康と大切な住まいの価値を守ることに直結します。
季節の変わり目は、日頃なかなか目が届かない外壁の状態をチェックし、補修を検討するのに適したタイミングです。スターペイントでは、お客様のお住まいの外壁や屋根の状態をふまえた最適なメンテナンスプランをご提案しています。
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