
瓦屋根の頂上部分、家のてっぺんを走る「棟(むね)」。この部分は、家全体を風雨から守るために非常に重要な役割を担っています。しかし、棟は屋根で最も高く、風雨や紫外線の影響を直接受けるため、経年劣化や地震・台風によってダメージを受けやすい場所でもあります。 棟瓦がずれたり、隙間を埋める漆喰(しっくい)が剥がれたりした状態を放置すると、そこから雨水が浸入し、雨漏りや下地の腐食、最悪の場合は棟が崩落する危険性も伴います。そうなると、修理費用は何倍にも膨れ上がってしまいます。 この記事では、戸建て住宅にお住まいで屋根の状態が気になる方へ向けて、棟瓦の「積み直し」にかかる費用相場、費用の内訳、そして「漆喰補修」などの他の修理方法との違いを徹底的に解説します。ご自宅の屋根メンテナンスを検討する際の、確かな判断材料としてぜひお役立てください。
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棟瓦の積み直しとは?
棟瓦の「積み直し」とは、具体的にどのような工事を指すのでしょうか。まずは、その目的と内容、そして混同されがちな「漆喰補修」や「部分補修」との根本的な違いについて確認し、なぜ積み直しが必要なのかを理解しましょう。
棟瓦の積み直しの目的と内容
棟瓦の「積み直し」は、単なる表面的な補修とは異なり、棟部分を根本的に作り直す大規模な改修工事です。その最大の目的は、**「棟の防水性能と固定力を新築時に近い状態、あるいはそれ以上に回復させること」**にあります。
日本の伝統的な瓦屋根の棟は、「葺き土(ふきつち)」と呼ばれる土台の上に瓦を乗せ、その隙間を漆喰で埋めて固定する「湿式工法」で造られていることが多くあります。しかし、長年の風雨や地震の揺れにより、漆喰が剥がれたり、内部の葺き土が流出したりすると、瓦を固定する力が弱まり、ズレや歪みが生じます。
棟瓦の積み直し工事では、以下の工程が一般的に行われます。
- 既存棟瓦の解体・撤去: まず、現在積まれている棟瓦(冠瓦や熨斗瓦)を一枚一枚丁寧に取り外します。
- 古い下地(葺き土・漆喰)の撤去: 瓦の下にある古い葺き土や劣化した漆喰をすべて撤去し、清掃します。
- 下地(防水シート)の確認・補修: 棟の頂点にある防水シート(ルーフィング)が露出します。このシートに破れや劣化がないかを確認し、必要であれば部分補修や増し貼りを行います。ここが雨漏りを防ぐ最後の砦であるため、非常に重要な工程です。
- 新しい下地の構築: 新しい下地を作ります。伝統的な湿式工法の場合は新しい葺き土を、現代的な「乾式工法」や「ガイドライン工法」の場合は、土の代わりに樹脂製の芯木や専用の金具、防水テープなどを使用して強固な土台を構築します。
- 棟瓦の積み直し(再設置): 撤去した棟瓦、あるいは新しい棟瓦を、新しい下地の上に再び積み上げていきます。この際、瓦同士を銅線で緊結したり、強力なビスや専用の金具で下地に固定したりすることで、地震や台風に強い構造を作ります。
- 仕上げ(漆喰・面戸): 湿式工法の場合は、瓦の隙間に新しい漆喰を丁寧に詰め、雨水の侵入を防ぎます。乾式工法の場合は、「乾式面戸(かんしきめんど)」と呼ばれる専用の部材(パッキン付きの樹脂製パーツ)を取り付け、棟内部への雨水の侵入を物理的に防ぎます。
この一連の作業により、棟瓦は強固に固定され、耐風性・耐震性・防水性が飛躍的に向上します。特に近年主流となっている「ガイドライン工法」(屋根瓦の耐風・耐震性能基準を定めた工法)に沿って施工することで、従来の工法よりも格段に災害に強い屋根を実現できます。
漆喰補修・部分補修との違い
「棟の調子が悪い」と感じたとき、選択肢は「積み直し」だけではありません。「漆喰補修(詰め直し)」や「部分補修(ズレの直し)」といった、より簡易的な修理方法も存在します。しかし、これらは「積み直し」とは目的も効果も全く異なります。
- 漆喰補修(詰め直し): これは、棟の表面に見えている漆喰が剥がれたり、ひび割れたりしている箇所に、**新しい漆喰を「上塗り」または「詰め直す」**作業です。あくまで表面的な美観の回復と、隙間を一時的に埋める応急処置的な意味合いが強い工事です。 内部の葺き土が流出していたり、棟全体が歪んでいたりする根本的な問題は解決できません。漆喰だけを新しくしても、数年で再び剥がれてくる可能性が高いです。
- 部分補修(ズレの直し・差し替え): 台風や地震などで、棟の一部(例:端の瓦1枚だけ)が明らかにずれたり、割れたりした場合に行う工事です。該当箇所のみを一度解体し、固定し直すか、新しい瓦に差し替えます。 被害が局所的であれば有効ですが、棟全体が劣化している場合には適していません。
これらの違いを理解するために、以下の比較表をご覧ください。
| 比較項目 | 棟瓦の積み直し(根本改修) | 漆喰補修(表面補修) | 部分補修(局所対応) |
|---|---|---|---|
| 工事内容 | 棟を一度すべて解体し、下地から作り直す | 劣化した表面の漆喰を詰め直す(上塗り) | ズレたり割れたりした特定の瓦のみを修理 |
| 主な目的 | 耐震性・耐風性・防水性の根本的な回復 | 美観の回復、雨水の応急的な浸入防止 | 局所的な破損箇所の修復 |
| 耐久性 | 約20〜30年以上 (工法による) | 約3〜7年(内部の劣化状況による) | 不定(他の部分がすぐに劣化する可能性) |
| 費用相場 | 6,000〜12,000円/m (足場代別途) | 2,500〜6,000円/m (足場不要な場合あり) | 15,000円〜/箇所 (足場代別途) |
| 工期 | 約3〜5日(足場含む) | 約1〜2日 | 約1〜2日 |
| 適した症状 | ・棟全体が波打っている ・瓦のズレが広範囲 ・漆喰の剥離が激しい ・内部の土が流出している | ・漆喰の表面的なひび割れ、軽微な剥がれ ・棟自体の歪みはない | ・台風などで瓦が1〜2枚だけずれた ・明らかな割れが1箇所発生した |
どの工事を選ぶべきか? 判断基準は、**「棟の内部(下地)まで劣化が進んでいるか否か」**です。 表面の漆喰が少し剥がれているだけで、棟全体のラインが真っ直ぐであれば「漆喰補修」で対応できるかもしれません。しかし、棟が波打っていたり、瓦のズレが複数箇所で見られたりする場合は、内部の葺き土が流出しているサインです。この状態で漆喰補修だけを行っても、まさに「焼け石に水」であり、根本的な解決にはなりません。 ご自宅の屋根がどの状態にあるか正確に知るには、専門家による診断が不可欠です。
「うちの場合はどちらの工事が必要なんだろう?」と迷われたら、まずは専門業者の診断を受けることをお勧めします。 ご自宅の屋根の状態を今すぐチェック!無料見積シミュレーションはこちらから。
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棟瓦積み直しの費用相場と内訳
棟瓦の積み直しは根本的な改修工事となるため、費用も漆喰補修などに比べて高額になります。ここでは、費用の全国的な相場と、見積もりを見たときに慌てないための「費用の内訳」や「変動要因」について詳しく解説します。
棟瓦積み直しの費用相場(全国平均)
棟瓦の積み直し費用は、一般的に**「1メートルあたりの単価」**で算出されます。屋根の頂上部分(大棟)や、屋根の四隅の傾斜部分(隅棟・下り棟)の長さに応じて費用が変わります。
以下は、棟瓦の積み直しにかかる費用の目安(全国平均)です。
| 項目 | 費用の目安(税別) | 内容・備考 |
|---|---|---|
| 棟瓦積み直し(1mあたり) | 6,000円 〜 12,000円/m | 既存棟の解体・撤去、下地処理、新しい棟の施工費、材料費(漆喰・金具等)を含む。 |
| 足場設置費(一式) | 100,000円 〜 200,000円 | 住宅の規模(建坪30坪前後)、屋根の高さ・勾配による。安全・品質確保のため原則必要。 |
| 廃材処分・諸経費 | 10,000円 〜 30,000円 | 解体した古い葺き土、瓦、漆喰などの産業廃棄物処理費、運搬費など。 |
| 【総額目安(棟長さ15mの場合)】 | 約200,000円 〜 500,000円 | (例:10,000円/m × 15m)+ 足場代15万円 + 諸経費 = 30万円〜 |
なぜ費用に幅があるのか? 1mあたりの単価や総額に大きな幅があるのは、後述する「工法(湿式・乾式)」「屋根の形状」「瓦の種類」によって、使用する材料や手間(工数)が大きく異なるためです。
「1m単価」と「総額費用」の関係 見積もりを見る際は、必ず「棟の総延長(合計何メートルか)」と「1mあたりの単価」を確認しましょう。 例えば、一般的な切妻屋根(本を開いて伏せたような形状)の棟は、頂上の「大棟」一本(約10〜12m)です。 しかし、寄棟屋根(四方向に傾斜がある形状)や入母屋屋根(上部が切妻、下部が寄棟)の場合、大棟に加えて四隅の「隅棟(下り棟)」が4本(各3〜5m程度)加わります。 仮に1m単価が同じ8,000円でも、
- 切妻(10m)の場合: 8,000円 × 10m = 80,000円
- 寄棟(大棟10m + 隅棟4m×4本 = 26m)の場合: 8,000円 × 26m = 208,000円 となり、棟の施工費だけで倍以上の差が出ることがあります。
足場代は必須 棟瓦の修理は高所作業であり、労働安全衛生法により足場の設置が義務付けられています。また、足場があることで職人の作業効率と安全性が確保され、結果的に施工品質の向上にも繋がります。「足場代を節約したい」というお気持ちは分かりますが、屋根工事において足場は不可欠な費用とお考えください。 なお、どうせ足場を組むのであれば、同時に外壁塗装や雨樋の修理、他の屋根部分の点検・補修も依頼すると、足場代が一度で済むため、トータルコストを大幅に抑えることができます。
ご自宅の屋根形状や面積で、足場代を含めたおおよその総額が知りたい場合は、無料の見積もりシミュレーションが便利です。 わずか3分で費用がわかる!無料見積シミュレーションをお試しください。
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費用が変動する主な要因
棟瓦の積み直し費用は、画一的ではありません。以下のようないくつかの要因によって、費用は大きく変動します。
- 棟の長さ・形状(屋根形状) 前述の通り、棟の総延長が長ければ長いほど、費用は比例して高くなります。切妻屋根よりも、寄棟屋根や入母屋屋根の方が、棟の総延長が長くなるため高額になる傾向があります。
- 工法(湿式・乾式・ガイドライン工法) どの工法で積み直すかによって、使用する材料と手間が変わります。
- 湿式工法: 伝統的な工法で、葺き土や漆喰を使用します。材料費は比較的安価ですが、職人の技術(左官技術)が必要で、工期も天候に左右されやすいです。
- 乾式工法(ガイドライン工法): 葺き土や漆喰を使わず、専用の金具や樹脂製の乾式面戸、防水テープなどを使用します。耐震性・耐風性に優れ、工期も短縮できますが、専用部材の費用がかかるため、湿式工法に比べて1mあたりの単価が1,000円〜3,000円程度高くなるのが一般的です。現在はこちらが主流です。
- 瓦の種類(陶器瓦・いぶし瓦・セメント瓦など) 棟に使用されている瓦の種類によっても費用が変わる場合があります。
- 陶器瓦・いぶし瓦: 伝統的な瓦で、再利用(そのまま積み直す)が可能な場合が多いです。もし瓦が割れていて交換が必要な場合、同じ瓦を探す手間や費用がかかることがあります。
- セメント瓦(モニエル瓦など): 塗装でメンテナンスされている瓦です。積み直しの際に瓦が割れやすく、再利用が難しい場合があります。また、積み直し後に棟部分の再塗装が必要になることもあり、その分の費用が追加で発生する可能性があります。
- 屋根の勾配(傾斜)と高さ
- 勾配: 屋根の傾斜が急(6寸勾配以上など)になると、作業の危険度が上がり、作業効率も低下します。そのため、通常の足場に加えて「屋根足場」と呼ばれる傾斜面用の足場が必要になる場合があり、追加費用がかかります。
- 高さ: 3階建ての住宅など、屋根の高さが標準(2階建て)よりも高い場合、足場の設置費用が割高になります。
- 下地の劣化状況 棟を解体した際、棟の下にある野地板(屋根の構造用合板)や防水シート(ルーフィング)まで腐食や劣化が進んでいる場合があります。その場合、棟の積み直しだけでなく、野地板の張り替えや防水シートの補修・張り替えといった追加工事が必要になり、費用が別途発生します。
- 地域・人件費・業者 物価や人件費は地域によって差があります。また、依頼する業者が大手ハウスメーカーか、地元の工務店か、専門の板金・瓦業者かによっても、中間マージンの有無などで費用は変わってきます。
工法による違いと耐久性の比較
棟瓦の積み直しには、大きく分けて「湿式工法」と「乾式工法」の2種類があります。近年では、乾式工法をさらに進化させた「ガイドライン工法」が主流です。それぞれの特徴、耐久性、費用を比較検討しましょう。
湿式工法と乾式工法の違い
かつての日本の瓦屋根は、そのほとんどが「湿式工法」で施工されていました。これは、葺き土(ふきつち)と呼ばれる粘土質の土を台座にし、その上に瓦を乗せ、隙間を漆喰で埋めて固定するという、職人の勘と経験が頼りの伝統的な工法です。
一方、阪神淡路大震災や近年の大型台風の教訓から生まれたのが「乾式工法」です。これは、葺き土や漆喰を一切使用せず、工業化された専用の部材(金具、樹脂製の芯木、防水テープ、乾式面戸など)を用いて、瓦を物理的に固定する現代的な工法です。
特に、国土交通省の告示(平成13年)に基づいて定められた「瓦屋根標準設計・施工ガイドライン」に準拠した施工法は「ガイドライン工法」とも呼ばれ、現在の新築や改修ではこの工法が標準となっています。
それぞれの特徴、耐久性、費用を比較した表が以下になります。
| 比較項目 | 湿式工法(従来工法) | 乾式工法(ガイドライン工法) |
|---|---|---|
| 使用材料 | 葺き土(粘土)、漆喰、銅線 | 専用金具、樹脂製芯木、ビス、防水テープ、乾式面戸(樹脂製パッキン) |
| 構造 | 土と漆喰の粘着力で瓦を固定 | 金具とビスで瓦と下地を物理的に緊結 |
| メリット | ・伝統的な外観を維持できる ・材料費が比較的安価 ・曲線的な棟など、複雑な形状にも対応しやすい | ・耐震性、耐風性が非常に高い(地震の揺れや強風に強い) ・土を使わないため屋根の軽量化に繋がる ・工期が短い(天候に左右されにくい) ・メンテナンス周期が長い |
| デメリット | ・地震の揺れで土台が崩れやすい ・強風で漆喰が剥がれやすい ・経年劣化で土が流出し、歪みやすい ・定期的な漆喰補修(約10〜15年)が必要 ・職人の技術力によって仕上がりが左右される | ・湿式工法に比べ、初期費用(材料費)がやや高価 ・専用部材の知識と施工技術が必要 |
| 耐久性目安 | 約15〜20年(※10年前後で漆喰補修推奨) | 約25〜30年以上(※瓦自体の耐用年数に準じる) |
| 費用相場 (1mあたり) | 6,000円〜10,000円 | 8,000円〜12,000円 |
| 推奨住宅 | ・築年数が古く、伝統的な工法での修復を希望する場合 ・コストを最小限に抑えたい場合(※短期的な視点) | ・すべてのお住まい ・特に地震や台風が多い地域にお住まいの場合 ・長期的なメンテナンスコストを抑えたい場合 |
現在、棟の積み直しを行うのであれば、特別な理由がない限り「乾式工法(ガイドライン工法)」を選択することを強くお勧めします。 初期費用は湿式工法よりも1mあたり数千円高くなりますが、その後のメンテナンスフリー性能と、災害に対する圧倒的な安心感を考慮すれば、その価値は十分にあります。
長期的に見たコストパフォーマンス
屋根の修理を考えるとき、つい「今回の工事費用」という初期費用(イニシャルコスト)だけに目が行きがちです。しかし、住宅は数十年単位で住み続けるものですから、「維持費用(ランニングコスト)」を含めた「ライフサイクルコスト」で考えることが非常に重要です。
ここで、棟の積み直しにおける「湿式工法」と「乾式工法」の30年間のトータルコストをシミュレーションしてみましょう。
【条件】
- 棟の総延長:15m
- 足場代:1回につき150,000円(※漆喰補修は足場不要の場合もあるが、安全のため足場有りで計算)
- 湿式工法(積み直し):8,000円/m
- 乾式工法(積み直し):10,000円/m
- 漆喰補修(湿式の場合):3,000円/m(12年ごとに行うと仮定)
A)湿式工法を選択した場合(30年間)
- 1年目(積み直し)
- 工事費:8,000円 × 15m = 120,000円
- 足場代:150,000円
- 合計:270,000円
- 12年目(漆喰補修)
- 工事費:3,000円 × 15m = 45,000円
- 足場代:150,000円
- 合計:195,000円
- 24年目(漆喰補修)
- 工事費:3,000円 × 15m = 45,000円
- 足場代:150,000円
- 合計:195,000円
- 【湿式工法】30年間のトータルコスト: 270,000 + 195,000 + 195,000 = 660,000円
B)乾式工法を選択した場合(30年間)
- 1年目(積み直し)
- 工事費:10,000円 × 15m = 150,000円
- 足場代:150,000円
- 合計:300,000円
- 12年目(メンテナンス)
- 乾式工法は基本的に棟のメンテナンスフリー。
- (※ただし、15年〜20年で外壁塗装などを行う場合、足場を組むついでに点検は推奨)
- 24年目(メンテナンス)
- 同上。
- 【乾式工法】30年間のトータルコスト: 300,000円
【シミュレーション結果】
- 初期費用:乾式工法の方が 30,000円 高い
- 30年トータル:乾式工法の方が 360,000円 も安くなる
※これはあくまで一例のシミュレーションです。 上記の例では、初期費用で3万円の差があっても、1回目の漆喰補修(12年目)の時点で乾式工法の方がトータルコストで安くなる計算です。 湿式工法は、定期的な漆喰補修という「維持費用」が必ず発生します。それに対し、乾式工法は初期費用こそ高いものの、その後の維持費用を大幅に削減できるため、長期的に見れば圧倒的にコストパフォーマンスに優れていると言えます。
「初期費用が安いから」という理由だけで湿式工法を選ぶと、将来的にかえって高くつく可能性があることを覚えておきましょう。 ご自宅の将来設計に合わせた最適な工法を選ぶためにも、まずは現状の正確な見積もりを取得することが第一歩です。
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積み直しが必要なサインと放置リスク
棟瓦の不具合は、屋根に登らないと確認しづらいため、発見が遅れがちです。しかし、放置すると住宅全体に深刻なダメージを与えかねません。ここでは、積み直しを検討すべき「危険なサイン」と、それを見逃した場合のリスクを解説します。
修理が必要な代表的な症状
ご自宅の屋根に以下のような症状が見られたら、棟瓦の積み直し、あるいは早急な点検が必要なサインです。安全な場所(2階の窓やベランダ、あるいは地上)から双眼鏡などを使ってチェックしてみてください。 (※危険ですので、ご自身で屋根に登ることは絶対におやめください)
- 棟瓦が波打っている・ずれている最も危険なサインの一つです。棟のラインが真っ直ぐではなく、波打っているように見えたり、瓦が明らかに蛇行したりしている場合、内部の葺き土が雨水で流出・痩せてしまい、瓦を支えきれなくなっている証拠です。固定力も著しく低下しており、強風や地震でいつ崩れてもおかしくない状態です。
- 漆喰が剥がれて黒ずみが出ている漆喰は棟の防水と固定の要です。この漆喰が広範囲にわたって剥がれ落ち、内部の葺き土が黒く(湿って)見えている状態は非常に危険です。葺き土が常に雨水を吸い込んでいる状態で、雨漏りの一歩手前です。また、葺き土が濡れると、冬場に凍結・膨張(凍害)し、さらに棟を内側から破壊する原因にもなります。
- 棟から雑草が生えている信じられないかもしれませんが、実際に起こり得る症状です。漆喰が剥がれ、葺き土が流出した隙間に埃や砂が溜まり、そこに鳥が運んできた種子などが根付いて雑草が生えることがあります。これは、棟の内部が常に湿っており、土が露出している何よりの証拠です。防水機能は完全に失われていると考えてよいでしょう。
- 強風や地震の後に瓦が浮いた・隙間ができた台風や地震の後、棟瓦の端(棟巴)が浮いたり、瓦同士の隙間が目に見えて広がったりした場合も要注意です。元々劣化していた棟が、外部からの力でとどめを刺された状態です。固定している銅線が切れたり、下地が崩れたりしている可能性が高く、次の強風で瓦が飛散・落下する危険性があります。
これらの症状は、いずれも「漆喰の詰め直し」のような表面的な補修では手遅れです。棟の内部構造から作り直す「積み直し」が必要な段階と判断されます。
放置するとどうなる?
「まだ雨漏りしていないから大丈夫」と、これらのサインを放置すると、取り返しのつかない事態に発展し、修理費用も爆発的に増加します。
- 雨漏り・野地板腐食 棟の隙間から侵入した雨水は、まず屋根の防水シート(ルーフィング)の上を流れます。しかし、防水シートも万能ではなく、劣化や施工不良の箇所から、やがてその下にある「野地板(のじいた)」(屋根の構造用合板)に達します。 野地板は木材でできているため、一度濡れると乾きにくく、徐々に腐食していきます。野地板が腐ると、屋根材を固定する力が失われ、屋根全体の強度が著しく低下します。
- 棟崩壊による落下リスク 劣化が進んだ棟は、地震の揺れや大型台風の強風に耐えきれず、棟瓦が丸ごと崩落する危険性があります。重い瓦が地上に落下すれば、ご家族はもちろん、お隣の家や通行人に直撃し、甚大な被害(場合によっては賠償責任)を引き起こす可能性があります。
- 屋根全体の葺き替えが必要になる可能性 野地板の腐食が広範囲に及ぶと、もはや「棟の積み直し」だけでは対処できません。屋根材をすべて剥がし、腐った野地板を張り替え、防水シートを新設し、屋根材をすべて新しく設置し直す「葺き替え(ふきかえ)工事」が必要になります。 葺き替え工事は、屋根リフォームの中で最も大掛かりな工事であり、費用も150万円〜300万円以上かかることが一般的です。
【費用比較:早期補修 vs 放置した場合】
| 対応 | 工事内容 | 費用目安 |
|---|---|---|
| 早期対応 | 棟瓦の積み直し (乾式工法・15m・足場込み) | 約30〜50万円 |
| 放置した場合 | 屋根全体の葺き替え (野地板交換・瓦屋根) | 約150〜300万円 |
棟の不具合という「小さな火種」を放置した結果、修理費用が5倍、10倍にも跳ね上がってしまうのです。 「棟が波打っているかも?」と感じたら、それは住宅が発する重大なSOSサインです。手遅れになり、莫大な費用がかかる前に、専門家による正確な診断を受けることが、結果的に最も費用を抑える最善の方法となります。
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工事の流れと期間の目安
実際に棟瓦の積み直しを依頼した場合、どのような流れで工事が進むのでしょうか。一般的な施工のステップと、工事にかかる期間の目安、そして天候が工期に与える影響について解説します。
施工の流れ(一般的な工程)
棟瓦の積み直し工事は、以下のステップで進められるのが一般的です。業者によって細部は異なりますが、大まかな流れを把握しておきましょう。
- 現地調査・見積もり まず、業者が現地を訪問し、屋根の状態を詳細に調査します。屋根に登れる場合は登り、ドローンや高所カメラを使う場合もあります。棟の長さ、劣化状況、屋根の勾配、下地の状態などを確認し、写真や動画を撮影します。 調査結果に基づき、最適な工法(湿式・乾式など)を提案し、詳細な見積書を作成します。
- ご契約・近隣挨拶 見積もり内容に納得いただけたら契約となります。工事日程の調整後、業者が工事開始前に近隣の住宅へ伺い、工事内容や期間、騒音などについて説明し、ご挨拶を行います。これは、後のトラブルを防ぐために非常に重要です。
- 足場設置・養生 工事初日。まず、住宅の周囲に足場を組み、塗料や埃が飛散しないようメッシュシートで全体を養生します。作業員の安全と作業品質を確保するための土台作りです。(工期:約1日)
- 棟瓦の解体・撤去 足場が完成したら、棟部分の工事を開始します。まず、既存の棟瓦(冠瓦、熨斗瓦など)を慎重に取り外し、地上へ下ろします。
- 下地(葺き土・漆喰)撤去・清掃 瓦の下にある古い葺き土や劣化した漆喰をすべて撤去します。この際、大量の土埃が出るため、周囲への配慮が必要です。撤去後、下地(防水シート)の上に残った土やゴミを綺麗に清掃します。
- 下地調整(防水処理・芯木設置) 清掃後、露出した防水シート(ルーフィング)の状態を最終確認します。破れや穴があれば、防水テープや新しいシートで補修します。 その後、新しい棟の土台を作ります。乾式工法(ガイドライン工法)の場合、土の代わりに樹脂製の芯木や、棟を強固に固定するための専用金具(棟金具)を下地の垂木にビスで固定していきます。
- 新棟瓦の積み直し 新しい下地の上に、取り外した瓦(清掃・点検したもの)、または新しい瓦を積み直していきます。ガイドライン工法では、瓦一枚一枚をパッキン付きのビスで芯木や垂木に強固に固定し、地震や台風で飛散・ズレが起きないように施工します。
- 仕上げ(乾式面戸・漆喰) 瓦の隙間を塞ぐ「雨仕舞(あまじまい)」の工程です。
- 乾式工法の場合: 「乾式面戸」という、防水パッキンが付いた樹脂製の専用部材を取り付け、棟内部への雨水や害虫の侵入を物理的に防ぎます。
- 湿式工法の場合: 新しい漆喰を、職人がコテを使って丁寧に塗り込み、隙間を埋めていきます。
- 清掃・最終確認・足場解体 棟の積み直しが完了したら、屋根全体の清掃(撤去した土埃など)を行います。瓦に割れやズレがないか、雨仕舞が適切かなどを入念にチェック(完工検査)します。 問題がなければ、足場を解体・撤去し、周囲を清掃して、すべての工事が完了・お引き渡しとなります。(工期:棟工事〜足場解体まで 約2〜4日)
工期の目安と天候リスク
棟瓦の積み直し工事全体の工期は、住宅の規模や棟の長さにもよりますが、一般的に3〜5日程度です。
- 1日目:足場設置、養生
- 2日目:既存棟の解体、下地処理
- 3日目:棟の積み直し、仕上げ
- 4D目:清掃、最終確認、予備日
- 5日目:足場解体、引き渡し
ただし、これはあくまで天候に恵まれた場合のスムーズな日程です。屋根工事は、天候、特に**「雨」と「強風」**に大きく左右されます。
天候リスクについて
- 雨天・降雪時: 屋根工事は、雨や雪の日は原則として作業中止となります。 理由は、第一に作業員の安全が確保できないこと(滑落リスク)。第二に、施工品質に重大な問題が出るためです。 棟を解体して防水シートが露出した状態で雨に降られると、下地(野地板)が濡れてしまい、腐食の原因となります。また、湿式工法の場合は漆喰が雨で流れてしまい、乾式工法の場合も部材の固定や防水テープの接着に支障が出ます。 そのため、工事期間中に雨天が続くと、その日数分だけ工期は延長されます。
- 強風時: 風が強い日も作業が中止になることがあります。足場の上での作業は危険であり、特に瓦のような重量物を扱う作業は、風に煽られて落下させる危険性があるためです。
- 梅雨・台風シーズン・冬季の工事: 梅雨や台風シーズン、あるいは積雪のある地域の冬季は、天候不順により工期が予定通りに進まない可能性が高い時期です。 業者は天気予報を常に見ながら、棟を解体するタイミング(雨が降らない日)を見計らって作業を進めますが、工期には余裕を持っておく必要があります。
工事を依頼する際は、こうした天候リスクによる工期の延長もあらかじめ考慮に入れておきましょう。
保険・補助金を活用できるケース
棟瓦の積み直しにはまとまった費用がかかりますが、破損の原因や自治体の制度によっては、費用負担を大幅に軽減できる可能性があります。知っておくべき「火災保険」と「リフォーム補助金」の活用法を解説します。
火災保険で修理費がカバーされる条件
多くの人が火災保険を「火事のときの保険」と誤解していますが、現在の火災保険(住宅総合保険)は、火災以外にもさまざまな自然災害による損害を補償する内容になっていることがほとんどです。 棟瓦の積み直しに関して、火災保険が適用される可能性があるのは、主に**「風災・雪災・雹災(ひょうさい)」**による被害です。
【保険適用の主な条件】
- 原因が自然災害(風災・雪災・雹災)であること
- 風災: 台風、竜巻、突風、強風などによって棟瓦が飛散した、ずれた、崩れた場合。
- 雪災: 大雪の重みで棟が歪んだ、崩れた場合。
- 雹災: 雹(ひょう)が直撃して瓦が割れた、破損した場合。 (※地震による被害は、火災保険に付帯する「地震保険」の対象となりますが、認定基準が異なります)
- 経年劣化ではないこと これが最も重要なポイントです。「長年の雨風で漆喰が剥がれ、土が流出した」といった**「経年劣化」による不具合は、保険の対象外**です。 あくまで、「先日の台風によって、それまで問題なかった棟が破損した」というような、突発的な自然災害が直接の原因である必要があります。
- 被害発生から3年以内であること 保険法により、保険金の請求期限は「被害を受けたときから3年以内」と定められています。3年以上前の台風被害などを後から申請することはできません。
- 免責金額(自己負担額)を超えていること 多くの火災保険には、「免責金額(自己負担額)」が設定されています(例:5万円、10万円、20万円など)。修理費用がこの免責金額を超えない場合(例:修理費15万円で免責20万円の場合)、保険金は支払われません。
【申請の一般的な流れ】
- 業者へ連絡: まずは信頼できる屋根修理業者に連絡し、被害状況の調査と修理見積もりを依頼します。この際、「自然災害による被害の可能性がある」ことを伝えます。
- 保険会社へ連絡: 業者から被害状況の報告と見積もりを受け取ったら、契約している保険会社(または代理店)へ事故(被害)の連絡を入れます。
- 必要書類の提出: 保険会社から送られてくる申請書類に記入し、業者が作成した「被害状況の写真(災害による破損箇所が分かるもの)」「修理見積書」などを添付して返送します。
- 保険会社の調査(鑑定): 保険会社が損害保険鑑定人を派遣し、被害状況が申請内容(自然災害によるものか、経年劣化ではないか)と一致するかを現地調査します。
- 保険金の決定・支払い: 調査結果に基づき、保険会社が支払う保険金額を決定し、契約者に通知・支払いが行われます。
【注意点:悪質業者トラブル】 「火災保険を使えば無料で修理できます」「保険申請を代行します」と訪問してくる業者には十分注意してください。 経年劣化であるにもかかわらず「台風のせいにして申請しましょう」と虚偽の申請を勧めたり、高額な手数料を請求したりする悪質な業者が存在します。保険の契約者(ご自身)以外が申請を代行することはできませんし、虚偽の申請は保険金詐欺にあたる可能性もあります。 保険申請は、あくまでご自身の判断で行い、業者はそのための「被害写真」と「見積書」の作成をサポートする立場であることを理解しておきましょう。
自治体のリフォーム補助金の活用例
棟瓦の修理に関連して、お住まいの自治体(市区町村)が独自のリフォーム補助金(助成金)制度を設けている場合があります。 ただし、「棟瓦の積み直し」単体の工事で補助金が下りるケースは稀です。多くの場合、他のリフォーム工事と組み合わせる必要があります。
【補助金の対象となり得る工事の例】
- 耐震化リフォーム(耐震改修補助) これが最も関連性の高い補助金です。特に昭和56年(1981年)5月31日以前の「旧耐震基準」で建てられた木造住宅を対象に、耐震性を向上させる工事(壁の補強、基礎の補強など)と併せて、**「屋根の軽量化」**を行う場合に補助金が出る制度が多くあります。 重い瓦屋根(特に湿式工法で大量の土を使っている屋根)を、軽い屋根材(金属屋根や軽量瓦)に葺き替える工事がこれにあたります。棟の積み直しと同時に、屋根全体の葺き替えを行う場合は、この補助金が活用できる可能性があります。 (例:○○市 木造住宅耐震改修助成事業)
- 省エネ(断熱)リフォーム 住宅の断熱性能を高める工事(窓の二重化、断熱材の追加など)と同時に、屋根のリフォームを行う場合に使える制度がある場合があります。
- 地域産材の使用・地場産業の活用 地元の瓦(例:三州瓦、石州瓦など)を使用することや、地元の瓦工事業者に依頼することを条件に、補助金が出る場合があります。
【補助金活用の注意点】
- 申請時期: 補助金は年度ごとに予算が決まっており、申請期間が限られています。予算上限に達し次第、受付終了となるため、早めの情報収集が必要です。
- 申請手続き: 工事「前」に申請が必要であり、工事「後」の申請は認められません。手続きも複雑な場合が多いです。
- 対象業者の指定: 自治体が指定・登録した業者でないと補助金が使えない場合があります。
まずは、お住まいの自治体のホームページ(「○○市 住宅 リフォーム 補助金」などで検索)を確認するか、市役所の建築指導課などに問い合わせてみましょう。 また、地域のリフォーム事情に詳しい業者であれば、利用可能な補助金制度を把握している場合もあります。見積もりシミュレーションなどを利用して業者に相談する際に、補助金の活用についても尋ねてみると良いでしょう。
棟瓦修理業者の選び方と見積もりの注意点
棟瓦の積み直しは、専門的な技術を要する重要な工事です。工事の成否は「業者選び」で決まると言っても過言ではありません。後悔しないために、信頼できる業者を見極めるポイントと、見積書で必ず確認すべき項目を解説します。
信頼できる業者を見極めるポイント
屋根修理業界には、残念ながら知識や技術の乏しい業者や、高額請求を行う悪質な業者も存在します。大切な住まいを守るために、以下のポイントで業者を厳しくチェックしましょう。
- 現地調査の丁寧さ これが最も重要です。
- 屋根に登って(あるいはドローン等で)調査しているか: 地上から見上げるだけで「積み直しが必要ですね」と言う業者は論外です。安全が確保できる範囲で屋根に登り、棟の状態を直接確認(触診、打音など)してくれるか、あるいはドローンや高所カメラで詳細な映像を撮影してくれるかを確認しましょう。
- 調査時間が短すぎないか: 5分や10分で終わる調査は、詳細を見落としている可能性があります。屋根全体、棟の隅々まで30分〜1時間程度かけてじっくり調査するのが通常です。
- 写真・動画で劣化状況を説明してくれる 調査後、撮影した写真や動画をその場で見せながら、「なぜ」積み直しが必要なのか、「どの部分が」どう劣化しているのかを、専門用語を使わずに分かりやすく説明してくれる業者は信頼できます。 逆に、不安を煽るだけで具体的な劣化状況を示さない業者は注意が必要です。
- 工法の提案力(選択理由の説明) 「うちは乾式工法しかやっていません」と一つの工法を押し付けるのではなく、ご自宅の状況(築年数、瓦の種類、予算)に合わせて、
- 「今回は乾式工法(ガイドライン工法)が最適です。なぜなら〜」
- 「予算を抑えるなら湿式工法も可能ですが、耐久性にこういうデメリットがあります」
- 「この部分だけなら部分補修でも対応できますが、全体で見ると積み直しをお勧めします」 といったように、複数の選択肢のメリット・デメリットを明確に説明し、施主(あなた)に選ばせてくれる業者は、知識と技術に自信がある証拠です。
- 建設業許可や専門資格の有無
- 建設業許可: 500万円以上の工事を請け負う場合に必要ですが、それ以下の工事でも許可を持っている業者は、一定の基準(経営経験、技術力など)をクリアしている証となります。「屋根工事業」や「板金工事業」の許可があるか確認しましょう。
- 専門資格: 「かわらぶき技能士(国家資格)」や「瓦屋根工事技士」「瓦屋根診断技士」といった、瓦屋根に関する専門資格保有者が在籍しているかも、技術力の一つの目安になります。
- 保証・アフターサポートの有無 工事が完了したら終わり、ではありません。万が一、工事後に不具合(雨漏りなど)が発生した場合に備え、「自社保証書」を発行してくれるかを確認しましょう。 保証期間(例:5年、10年)と、保証の対象範囲(どのような不具合を保証してくれるのか)を契約前に書面で明確にしておくことが重要です。
見積書で確認すべき項目一覧
複数の業者から見積もり(相見積もり)を取ることは、適正価格を知るために非常に重要です。しかし、ただ総額を比較するだけでは意味がありません。以下の項目が「一式」ではなく、詳細に記載されているか(明細がクリアか)をチェックしてください。
【見積書チェックリスト(表)】
| 大項目 | チェック項目 | 確認すべきポイント |
|---|---|---|
| 共通工事費 | □ 足場設置・解体費 | 「足場(メッシュシート込み)」と記載されているか。面積(㎡)もあれば尚良い。 |
| □ 養生費 | 玄関や車など、汚してはいけない部分の養生が含まれているか。 | |
| □ 現場管理費・諸経費 | 総額の5〜10%程度が一般的。高すぎないか。 | |
| 棟工事費 | □ 既存棟解体・撤去費 | 棟の長さ(m)と単価が記載されているか。 |
| □ 廃材処分費 | 解体した葺き土、瓦、漆喰などの処分費。「産業廃棄物処理費」として明記されているか。 | |
| □ 下地処理費 | 防水シート(ルーフィング)の補修、芯木設置など、下地作業の内容が分かるか。 | |
| □ 棟積み直し費 | 工法(「乾式工法」「ガイドライン工法」など)が明記されているか。 棟の長さ(m)と単価が記載されているか。 | |
| 材料費 | □ 使用材料 | 乾式面戸、棟金具、ビス、漆喰など、主要な使用部材が記載されているか。 |
| その他 | □(追加工事の可能性) | 「※下地(野地板)の腐食が著しい場合は、別途費用がかかります」等の注記があるか。 |
| 合計 | □ 合計金額(税抜・税込) | 税抜金額と税込金額が明確か。 |
| □ 保証内容・期間 | 見積書や契約書に、工事保証の内容が明記されているか。 |
【相見積もりの注意点】
- 「一式」表記に注意: 「棟工事 一式 300,000円」といった見積もりは、何にいくらかかっているのか不明瞭です。手抜き工事や、後からの追加請求の原因になります。
- 安すぎる見積もりにも注意: 他社より極端に安い見積もりは、必要な工程(下地処理など)を省いていたり、安価で質の悪い材料を使っていたり、あるいは足場代が含まれていなかったりする可能性があります。
- 比較する際は「同条件」で: A社は「湿式工法」、B社は「乾式工法」の見積もりでは、当然B社の方が高くなります。工法や使用材料など、できるだけ条件を揃えて比較することが重要です。
信頼できる業者選びと正確な見積もりの取得は、非常に手間がかかります。 まずは、ご自宅の相場感を掴むために、匿名のシミュレーションを利用してみるのも一つの手です。
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コラムのまとめ
この記事では、瓦屋根の「棟瓦の積み直し」について、その費用相場、工法の違い、修理のサイン、そして業者選びのポイントまで、網羅的に解説してきました。
重要なポイントを最後にもう一度整理しましょう。
- 費用相場は「1mあたり6,000円〜12,000円」+「足場代」 棟瓦の積み直し費用は、棟の総延長(m)で決まります。一般的な戸建て住宅(棟15m程度)の場合、足場代(10〜20万円)を含めた総額で、約20万円〜50万円が目安となります。
- 費用は「工法」「屋根形状」「劣化状況」で大きく変動する 費用は、伝統的な「湿式工法」か、現代的で高耐久な「乾式工法(ガイドライン工法)」かによって変動します。また、棟の総延長が長い寄棟屋根などは高額になり、下地(野地板)まで腐食していると追加費用が発生します。
- 長期的なコストパフォーマンスは「乾式工法」が圧倒的に有利 初期費用は湿式工法よりやや高いものの、乾式工法は施工後のメンテナンス(漆喰補修など)が不要なため、30年といった長期的なスパンで見れば、トータルコストを大幅に抑えることができます。
- 「棟の波打ち」「漆喰の剥がれ・黒ずみ」「雑草」は危険なサイン これらの症状は、棟の内部(下地)が劣化している証拠であり、「漆喰補修」では手遅れです。根本的な「積み直し」が必要な段階です。
- 放置リスクは「雨漏り」そして「高額な葺き替え工事」 棟の不具合を放置すると、雨水が野地板を腐食させ、最終的には屋根全体の葺き替え(150万円〜)が必要になる可能性があります。また、地震や台風で棟が崩落する危険性も伴います。 早期対応が、結果的に最も費用を抑える最善の策です。
棟瓦の積み直しは、単なる美観の回復ではありません。雨漏りを防ぎ、地震や台風から家を守り、住宅の資産価値を維持するために不可欠な「防衛的リフォーム」です。
ご自宅の屋根が、「築15年以上経過している」「そういえば漆喰が剥がれている気がする」「棟がなんとなく歪んで見える」…そう感じたら、決して放置せず、まずはご自宅の屋根が今どのような状態にあるのか、正確に「現状把握」することから始めましょう。 専門家の目で診断してもらうことで、今すぐ積み直しが必要なのか、それともまだ漆喰補修で対応できるのか、あるいは全く問題ないのかが明確になります。
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本格的な台風シーズンが到来する前に、ご自宅の屋根の「健康状態」をチェックしておくことは非常に重要です。強風や豪雨にさらされて棟瓦がずれたり、飛散したりする前に、まずは現状の劣化度を正確に把握しておきましょう。
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