
SGL鋼板は「次世代ガルバリウム鋼板」とも呼ばれ、その卓越した耐食性・耐久性から、近年、住宅の外壁や屋根材として非常に注目を集めています。
しかし、どんなに優れた素材であっても、必ず「デメリット」や「知っておくべき注意点」は存在します。メリットばかりを見て採用し、「こんなはずではなかった」と後悔するケースも少なくありません。
この記事では、SGL鋼板の素晴らしいメリットに隠れがちな弱点やデメリットを、外壁・屋根塗装の専門家の視点から専門的に解説します。さらに、他の素材との比較や、後悔しないための正しい選び方まで詳しく紹介します。
これから屋根や外壁のリフォームを検討されている方は、最適な素材選びの判断材料として、ぜひ最後までご覧ください。
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SGL鋼板とは?基礎知識と特徴をわかりやすく解説
まずは、SGL鋼板がどのような素材で、従来のガルバリウム鋼板と何が違い、なぜこれほど注目されているのか、その基礎知識を理解しておきましょう。
SGL鋼板の構造と成分(マグネシウム配合の仕組み)
SGL鋼板は、簡単に言えば「ガルバリウム鋼板の弱点を克服した進化版」です。SGLの「GL」はガルバリウム(Galvalume)を指し、その性能を超える「Super」なガルバリウム鋼板という意味で「SGL」と名付けられました。
従来のガルバリウム鋼板は、鋼板を「亜鉛」と「アルミニウム」の合金めっきでコーティングしたもので、亜鉛の「犠牲防食作用(鋼板より先に溶けて鋼板を守る力)」と、アルミニウムの「不動態皮膜(錆びにくいバリアを張る力)」を併せ持つことで、高い耐久性を実現していました。
SGL鋼板は、この亜鉛とアルミニウムのめっき層に、さらに**「マグネシウム(Mg)」**を約2%添加しています。
このマグネシウムが加わったことで、めっき層がより緻密で強固になり、特に**「自己修復作用」**が劇的に向上しました。万が一、鋼板に傷や切断面ができても、マグネシウムを含むめっき成分が溶け出し、その傷口を「かさぶた」のように覆って錆びの発生を強力に抑制します。
この技術は、主に日本製鉄(旧:日鉄住金鋼板)などのメーカーによって開発され、次世代の高耐久金属建材として広く普及し始めています。
一般的なガルバリウム鋼板との違い
SGL鋼板と従来のガルバリウム鋼板の最大の違いは、前述のマグネシウム添加による「耐食性(防錆性能)」の差です。
- 耐久性(防錆性能)SGL鋼板は、従来のガルバリウム鋼板と比較して約3倍以上の防錆性能を持つとされています。特に、金属建材の弱点であった「塩害(沿岸部)」「酸性雨・酸性雪(工業地帯や寒冷地)」に対して圧倒的な強さを発揮します。
- コスト性能が高い分、SGL鋼板は従来のガルバリウム鋼板よりも初期費用(材料費)がやや高めになる傾向があります。
- メンテナンスSGL鋼板の方が耐久性が高いため、再塗装などのメンテナンス周期を長く設定できる可能性があります。
- 施工方法SGL鋼板の性能を最大限に引き出すためには、施工にも注意が必要です。切断面の処理(端部処理)や、使用するビス(ネジ)の選定など、SGL鋼板の特性を理解した正しい施工が求められます。
SGL鋼板の主なデメリット
優れた耐久性を持つSGL鋼板ですが、その性能だけで判断すると、思わぬ落とし穴にはまる可能性があります。ここでは、採用前に必ず知っておくべき具体的なデメリットを詳しく見ていきましょう。
初期費用が高くなりやすい
SGL鋼板を選ぶ上で、最も分かりやすいデメリットがコスト面です。
- 材料費従来のガルバリウム鋼板と比較して、SGL鋼板の材料費(㎡単価)は約10%~20%程度高く設定されています。
- 施工費SGL鋼板の性能を活かすため、専用のビスや防水部材などを使用する場合があり、関連する部材費や施工手間がわずかに上がる可能性もあります。
屋根・外壁材の初期費用比較(目安)
| 材料名 | 初期費用(㎡単価) |
| SGL鋼板 | 高い |
| ガルバリウム鋼板 | 中~高い |
| スレート(コロニアル) | 安い |
| 窯業系サイディング | 安い~高い(グレードによる) |
もちろん、SGL鋼板は耐久性が高いため、メンテナンス周期が延び、長期的な視点(ライフサイクルコスト)で見ればコストパフォーマンスは非常に良いと言えます。しかし、リフォーム時の初期費用・予算を最優先で抑えたい場合には、デメリットとなり得ます。
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断熱性・遮音性が低い(金属屋根の共通弱点)
これはSGL鋼板特有ではなく、ガルバリウム鋼板も含めた「金属製建材」全般に共通するデメリットです。
- 断熱性金属は熱伝導率が非常に高いため、外気の熱をそのまま室内に伝えてしまいます。夏場は太陽熱で屋根・外壁が熱くなりやすく、冬場は室内の暖気が外へ逃げやすくなります。
- 遮音性素材自体が薄く硬いため、音を反響させやすい性質があります。特に屋根に使用した場合、大粒の雨が降ると「パラパラ」「トタン屋根のような」雨音が室内に響きやすくなります。
これらの弱点は、SGL鋼板の裏側に断熱材や遮音シートを一体化させた製品を選ぶか、施工時に屋根裏(天井裏)や壁の内部に高性能な断熱・遮音材を充填することで解消可能です。ただし、その分、施工費用はさらにアップすることになります。
施工技術・職人の腕に左右される
SGL鋼板のデメリットとして、専門家が最も懸念するのがこの点です。**「材料がどれだけ優秀でも、施工品質が低ければ寿命は縮まる」**ということです。
SGL鋼板はマグネシウムの力で切断面の防錆性が向上したとはいえ、施工時の扱いや処理が雑だと、そこが劣化の起点となります。
- 切断面やビス周辺の処理現場での切断時に出た鉄粉(もらい錆びの原因)の清掃が不十分だったり、ビスを打ち込む際の防水処理が甘かったりすると、そこから錆びが発生します。
- 防水シート(ルーフィング)の施工特に屋根の場合、SGL鋼板の下に敷く防水シートの施工が丁寧でないと、万が一SGL鋼板の隙間から水が浸入した際に、下地である野地板を腐食させてしまいます。
SGL鋼板の特性を正しく理解し、丁寧な施工ができる「信頼できる施工店」を選ぶことが、他のどの建材よりも重要になります。
信頼できる施工店のチェックポイント
| チェック項目 | 確認内容 |
| 施工実績 | SGL鋼板(またはガルバリウム鋼板)の施工実績が豊富か。 |
| メーカー認定 | 使用するメーカーの認定施工店(またはそれに準ずる知識)か。 |
| 説明の具体性 | デメリットや、断熱・遮音対策について具体的に説明してくれるか。 |
| 保証体制 | メーカー保証とは別に、自社での「施工保証」があるか。 |
| 見積書 | 「SGL鋼板一式」ではなく、メーカー名や製品名、下地処理(防水シートなど)の内容が明記されているか。 |
環境・立地によってはメリットが活かせないことも
SGL鋼板は万能ではありません。お住まいの地域や住宅環境によっては、その高い性能が発揮しにくい(=オーバースペックになる)ケースもあります。
内陸・乾燥地域では“オーバースペック”になることも
SGL鋼板の最大の強みは「塩害や酸性雨に対する圧倒的な耐食性」です。
しかし、海から遠く離れた内陸部で、気候が比較的穏やかな地域(雨や雪が少ない乾燥地域)の場合、従来のガルバリウム鋼板でも十分に30年近い耐久性を発揮できる可能性があります。
このような地域でSGL鋼板を選ぶと、従来のガルバリウム鋼板との性能差を実感しにくく、「単に初期費用が高い建材を選んでしまった」という結果(オーバースペック)になる可能性もゼロではありません。
地域別のおすすめ素材(一例)
| 地域環境 | おすすめ度:SGL | おすすめ度:ガルバリウム | 理由 |
| 沿岸部(塩害地域) | ◎(最適) | △ | SGLの防錆性が最も活きる。 |
| 工業地帯・寒冷地 | ○(推奨) | ○ | 酸性雨・酸性雪への耐性でSGLが有利。 |
| 内陸部・都市部 | ○ | ◎(十分) | コストバランスでガルバリウムも有力な選択肢。 |
ご自身の地域の環境特性を考慮し、本当にSGL鋼板の高性能が必要かを判断することが重要です。
海沿い・高湿度地域でもメンテナンスは必要
SGL鋼板は「非常に錆びにくい」素材ですが、「絶対に錆びない」わけではありません。また、「メンテナンスフリー」の建材でもありません。
たとえ耐食性の高いSGL鋼板であっても、海沿いや高湿度地域では、以下の点検とメンテナンスが不可欠です。
- 表面の汚れ除去:塩分やホコリが表面に付着したまま放置されると、塗膜の劣化を早めます。定期的な水洗い(年に1〜2回、ホースで水をかける程度)が推奨されます。
- 端部・ビスの点検:錆びが発生しやすいのは、必ず「端(切断面)」や「ビス(固定部)」、「傷がついた部分」からです。
- 定期点検:5年〜10年ごとに専門家による点検を受け、塗膜の状態やビスの緩み、錆びの兆候がないかを確認することが、SGL鋼板の寿命を最大限に延ばすことにつながります。
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SGL鋼板と他素材の比較(ガルバリウム・スレート・瓦)
他の主要な屋根・外壁材と比較したとき、SGL鋼板の「強み」と「弱み」はどこにあるのでしょうか。性能とコストを客観的に比較します。
耐久性・コスト・メンテナンス比較表
| 材料名 | 耐用年数(目安) | 初期費用 | メンテナンス性 | 断熱・遮音性 |
| SGL鋼板 | 約30〜40年 | 高め | 高(メンテ周期が長い) | △(対策が必要) |
| ガルバリウム鋼板 | 約25〜30年 | 中 | 中 | △(対策が必要) |
| スレート屋根(化粧スレート) | 約15〜20年 | 低 | 低(10年ごとの塗装推奨) | ○ |
| 日本瓦(陶器瓦) | 約40〜50年 | 高 | 高(塗装不要) | ◎ |
この表から分かる通り、SGL鋼板は「瓦」に次ぐ高い耐久性を持ちながら、「スレート」や「ガルバリウム」の弱点であったメンテナンス頻度を改善した、バランスの良い素材と言えます。ただし、断熱・遮音性だけは金属であるがゆえの弱点となっています。
価格・ライフサイクルコストでの違い
リフォームで重要なのは、初期費用だけでなく、住み始めてから将来的にかかる維持費を含めた**「ライフサイクルコスト」**です。
- スレート屋根:初期費用は最も安いですが、約10年ごとに再塗装(約40万~60万円)が必要になり、約30年後には葺き替え(交換)が必要になる場合もあります。
- SGL鋼板:初期費用は高いですが、塗膜(塗装)の耐久性も高いため、再塗装の目安は約15年~20年ごとと長くなります。30年間で塗装が1回で済む可能性があり、スレートが2回塗装することを考えると、総コストはSGL鋼板の方が安くなるケースも十分にあり得ます。
初期費用が安いという理由だけでスレートを選ぶと、結果的にメンテナンス費用がかさみ、「安物買いの銭失い」になる可能性もあります。30年スパンで総額いくらかかるのかを試算することが重要です。
後悔しないためのSGL鋼板の選び方と注意点
SGL鋼板のデメリットを理解したうえで、その性能を最大限に引き出すためには、以下のポイントを押さえて選ぶことが重要です。
信頼できるメーカー・施工店を選ぶ
SGL鋼板は、施工品質が命です。
- メーカーと実績の確認:SGL鋼板は複数のメーカーから提供されています。日本製鉄の「エスジーエル」など、信頼できるメーカーの製品か、またその施工店がSGL鋼板の施工実績を豊富に持っているかを確認しましょう。
- 保証体制:メーカーによる「材料保証(錆びや穴あきに対する保証)」と、施工店による「施工保証(雨漏りや施工不良に対する保証)」の両方が充実しているかを確認してください。
- 塗料との相性:将来の再塗装まで見据え、SGL鋼板に適した塗料(フッ素系や無機塗料など)の知識を持っているかも、良い業者を見極めるポイントです。
断熱・防音対策を同時に検討する
SGL鋼板のデメリットである「断熱性・遮音性」の低さは、事前の対策で必ず補うようにしましょう。
初期コストは上がりますが、屋根や壁に断熱・遮音材を併用することで、夏は涼しく冬は暖かい快適な住環境が手に入り、冷暖房費の削減(省エネ効果)にも繋がります。この対策を提案してくれない業者は注意が必要です。
SGL鋼板のデメリットを理解した上でのメリット再確認
ここまでデメリットや注意点を中心に解説しましたが、それらを理解することで、SGL鋼板が持つ本来の価値(メリット)がより明確になります。
長期的な耐久性・コスパの高さ
SGL鋼板の初期費用は高いですが、その30年〜40年という耐用年数は、他の建材を圧倒しています。
スレート屋根が10年ごとに塗装が必要なのに比べ、SGL鋼板の再塗装目安は15年~20年ごと。つまり、30年間でスレートが2~3回塗装するのに対し、SGL鋼板は1回で済む可能性があります。
このメンテナンス回数の差が、将来的なランニングコストを大幅に削減し、結果として「ライフサイクルコストが最も安い建材」の一つとなるのです。
高い防錆性・美観の持続性
マグネシウムの「自己修復メカニズム」による高い防錆性は、特に環境が厳しい地域(沿岸部、工業地帯、寒冷地)において、絶大な安心感をもたらします。
錆びにくいということは、塗膜の劣化(膨れや剥がれ)も起きにくいということであり、新築時やリフォーム時の美しい外観が長期間持続することも大きなメリットです。
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SGL鋼板の施工・メンテナンスで後悔しないために
最後に、SGL鋼板を採用した後で後悔しないための、具体的なメンテナンスのポイントを整理します。
定期点検・塗装タイミングの目安
SGL鋼板は高耐久ですが、点検は必要です。
- 点検周期:専門家による点検は5年ごとが理想です。最低でも10年に一度は点検を受けましょう。
- チェックポイント:特に「ビス(ネジ)まわり」の錆びや緩み、「建材の端部(切断面)」「傷がついた箇所」に錆びや塗膜の浮きがないかを重点的にチェックします。
- 再塗装の目安:立地環境によりますが、15年~20年目が最初の再塗装を検討するタイミングです。塗膜が劣化し、SGL鋼板のめっき層が剥き出しになる前に塗装で保護することが、鋼板本体の寿命をさらに延ばす秘訣です。
塗料選びと相性の注意点
SGL鋼板の再塗装は、DIYでは行わず、必ず専門業者に依頼してください。
SGL鋼板は表面が非常に滑らかで、塗料が密着しにくい特性があります。
- 下地処理(ケレン):塗装前に表面を研磨し、意図的に細かな傷をつける「ケレン作業」が必須です。
- プライマー(下塗り):SGL鋼板(金属)と上塗り塗料を強力に密着させるための、専用プライマー(下塗り材)の選定が非常に重要です。
これらの下地処理や下塗り材の選定を誤ると、せっかく高価なフッ素塗料や無機塗料で塗装しても、数年でパリパリと剥がれてくる最悪の事態を招きます。SGL鋼板の塗装実績が豊富な業者に任せることが、後悔しないための絶対条件です。
コラムのまとめ
SGL鋼板は、従来のガルバリウム鋼板を上回る圧倒的な防錆性・耐久性を持ち、ライフサイクルコストにも優れた非常に優秀な建材です。
しかし、そのメリットの裏には、「初期費用が高い」「断熱性・遮音性が低い」「施工品質に寿命が左右される」といった、採用前に必ず理解しておくべきデメリットも存在します。
これらの課題や弱点を理解せずに採用してしまうと、「こんなに夏が暑いとは思わなかった」「思ったより早く錆びが出てきた(施工不良)」といった後悔に繋がる可能性があります。
SGL鋼板選びで最も重要なのは、**「ご自宅の環境、予算、そして将来のメンテナンス計画に、その高性能が本当に合っているか」**を正しく判断することです。
素材の性能だけでなく、その性能を100%引き出してくれる施工店の技術力、そして長期的なアフターサポートまで含めて総合的に選ぶこと。デメリットを知ったうえで正しく対策し、採用することで、SGL鋼板は皆様の住まいを長期にわたって守り続ける、最も価値のある選択肢となるでしょう。
最後に
秋は気温・湿度が安定し、屋根や外壁の補修・塗装に最適な季節です。
夏の猛暑や台風でダメージを受けた可能性のあるご自宅の屋根材や外壁の状態を今のうちに確認して、最適なリフォーム時期を見極めましょう。
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ご自宅の補修費用をその場で把握できるので、ぜひお気軽にお試しください。
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